まるで本をもったときのような感触のあるiPadケースを |「DODOCase」CEO・Mr.Craig Dalton独占インタビュー(前編)
2010年、Appleが初めてiPadを世界へリリースした同じ日に最高のiPadケースを世に送り出した人たちがいました。初期モデルのリリース後あれよあれとファンを増やし、あのオバマ大統領も一目惚れをしたサンフランシスコ発のプレミアムアクセサリーメーカー「DODOCase(ドードーケース)」です。
タブレットや電子書籍の登場で情報を発信する手段が紙媒体からWeb媒体へと移り、地元の製本産業が衰退していくムーブメントの中、彼らは「本が電子書籍に変わったとしても、多くの人は本がもつ温かい感触を大切にしている。この最先端のデバイスとユーザーの間にある「感触」にビジネスチャンスがあるのではないか」ということに気づき、DODOCaseの創業に着手。今では一般のユーザーから著名人まで幅広い人気を得るブランドに急成長しました。
サンフランシスコベースボールファンの聖地・AT&Tパークの南対岸に位置し、近年湾岸沿いにある空き地や使われなくなった倉庫がアーティストやデザイナー、気鋭の起業家の手によって生まれ変わり、「今、地元で1番ホットなエリア」へ急速に生まれ変わりつつあるドッグパッチ地区に自社工場をかまえ、CEOを務めるのがCraig Dalton(クレッグ・ドルトン)氏。今回、そんなCraig氏へインタビューの機会を得ることができました。
日本では「まるでモレスキンのような触り心地」というキャッチフレーズや「オバマ大統領も愛用」という口コミで急速に人気となったDODOCase。使い心地、触り心地もさることながら、今や多くのファンから支持をあつめるDODOCaseの裏側には地元伝統産業への想いと 、ユーザー1人1人の利便性を考え抜いたこだわりが隠されていました。
ありとあらゆる情報が紙からWebへと急速に変わりつつある今の時代、「どこか当たり前すぎて忘れていた本がもつ温かさ」を思い返させてくれるDODOCase。創業から今に至るまでを追ったCraig氏への独占ロングインタビュー、ぜひお楽しみ下さい。
1. DODOCaseのブランド全容に迫る
——DODOCaseのブランドについてご紹介をお願いできませんでしょうか。
Craig氏:DODOCaseはタブレットケースやスマートフォンのケースを製造するプレミアムアクセサリーメーカーです。私たちが製造する商品はすべて職人の手で手掛けられ、全てサンフランシスコにある自社工場で製造しています。
特にiPadケースやiPhoneケースは私たちのラインナップで最も人気のある商品で、世界中で愛用して頂いています。今後はiPadやiPhoneのケースに加えて、よりライフスタイルに関わる商品、例えば財布や雑誌カバーなどの商品も増やしていく予定です。
2. DODOCase誕生の原点
——DODOCase設立のきっかけや原点について教えて頂けますでしょうか。
Craig氏:DODOCaseを創業したのは2010年4月、当時iPadの初期モデルが発売された日と同じ日です。DODOCase設立の背景にはタブレットや電子書籍リーダーの登場で、人が紙媒体からWeb媒体へ移行しはじめたムーブメントが背景にあります。当時、私たちが感じた気持ちをそのまま表現すると、本が電子書籍に変わることで本がもつ温かい感触 、「本を手に持つ喜び」が消えゆくのではないだろうか、とどこか寂しい気持ちでした。
もともと、サンフランシスコでは本を長持ちさせる為の製本手法「book-binding」と、その製本職人と呼ばれる独自産業が繁栄したエリアで、時代の流れで製本業者が減っていたこともあり、その気持ちは深いものでした。事実、私たちや私たちの上の世代は物心がついた時から本やお気に入りのブックカバーを付けた本ともに成長し、年を重ねてきましたので。
そこで、私たちは思いついたのです 。「伝統のある素材と伝統的な製本職人の技を組み合わせ、まるで本をもったときのような感触のあるiPadケースを作ろう」と。まだアイデアの段階でしたが1つ確信していたことは、あなたの人生を快適にしてくれる「何か」 に一度出会った時、きっとその人はその商品をずっと愛用してくれるだろう 、と。
iPadがリリースされる前、私自身「iPadの触り心地は過去にない、とても良いものだろう」とワクワクしていましたが、同時に多くの人々がiPadを心地よく持ち歩くためには「手に持った時にまるで本のようにを感じるケースを必要とするのではないか」と感じていました。そして、現在多くの方がDODOCaseのデザインや触り心地を楽しんでくれています。
3. iPadが誕生したその日、DODOCaseが予想していた「たった1つの出来事」
——創業時のエピソードをご紹介ください。
Craig氏:マーケティングの観点から見るとiPadの初期モデルが発売される直前、私たちはその日に起きる「1つの出来事」を予想していました。それは、Appleストアの前にiPadを購入したいファンの行列ができることです。それを予想していた私たちは「DODOCaseを知ってもらうこれ以上の機会はない」と考え、iPadのリリースを首を長くして待つファンの行列に対して、商品開発の傍らDODOCaseを知ってもらう為のアプローチを準備していました。
そして、ついに「その日」がやってきました。予想していた通り、Appleストアには長蛇の列と今までに見たことのない長蛇の列ができていました。私たちはその行列で待つファンへ「チラシ」を配りました。アナログな方法と言えばアナログですが、この作戦が効きました。
チラシを配る前日までは落ち着かない日が続きましたが、行列のファンからのフィードバックは素晴らしいものでその気持ちが吹き飛んだのを覚えています。iPadを待つ行列へチラシを配る 、それがDODOCaseから顧客への最初のアプローチでした。
先ほど「落ち着かない」と表現しましたが、DODOCaseに限らずどの事業でも「実際に顧客へその商品を見せるまで何が起きるかは分からない」と思います。しかし、私たちがその日見たものは「私たちが創ったものに対して、興奮する顧客の姿。」でした。リリース1日目でしたが、その光景を見て私たちはDODOCaseに喜んでくれる顧客以上に興奮してたのを覚えています。
4. Craig氏が影響を受けた100年続く企業の存在
——DODOCaseを設立するにあたり、影響を受けた人はいますか?またもしいらっしゃれば、エピソードを紹介いただけますか。
Craig氏:DODOCaseとしては時代を超えても愛されるデザイン 、いわゆるタイムレスデザインのアイテムを提供するすべての企業から影響を受けています。中でも、私個人として影響を受けた会社を1社挙げると、イングランドの自転車サドルメーカー「brooks(ブルックス)」がそうでしょう。1886年の創業以来、彼らは最新のトレンド、最新のデザインを追わず、シンプルで機能的なデザインのサドルを追い求め続けています。
私の中で彼らの商品は真の ” Timeless Design ” だと思っています。彼らの揺るがない理念から作り続けられる美しい最高級のサドルは時代を超えて愛される価値があり、100年経っても今なおその価値が本物であり続けている点は希有な存在です。
現在、私たちDODOCaseでは今やiPadケースだけではなくライフスタイルに関わる新商品の開発を手がけています。時代の流れにより作る商品は変わりますが、DODOCaseブランドのコアバリューはbrooks同様に変わりません。そして、この強力で普遍なコアバリューこそが非常に重要だと考えています。
5. なぜ、DODOCaseは選ばれているのか?
——DODOCaseの魅力の1つは手に持ったときの素材の質感だと感じています。素材選びに独自のルールなどあるのでしょうか。
Craig氏:DODOCaseでは、どのタブレットカバーを手がける場合でもブックカバーに使用されてきた伝統ある素材しか使用していません。製本業者のもつ職人の技術や伝統を大切にし、たとえ異なる色のラインナップでもDODOCase独自の高級感のある触り心地を提供できるように1つ1つ手作りで製造しています。
——顧客に感じて欲しい、DODOCaseの1番こだわりはどのような点でしょうか。
Craig氏:「まるで本のような温かみのある触り心地」、これに尽きます。最新のモダンデバイスと共に暮らすあなたへ「この触り心地」を提供したいのです。
私たちは紙の本と育った世代でした。時代が変わり、紙媒体から電子書籍へと情報を発信する、見る形は変わりましたがDODOCaseがあれば、あなたがタブレットを使うときの感触はまるであなたが幼かった時に一緒に育った本そのものです。この自分が幼いときに一緒に育った「あの感触」をそのままに最新の電子書籍を使うことができる、このスタイルが顧客に「私は時代の先端をいくライフスタイルを生きている」と喜ばれています。
もし、街中であなたがiPadをもって歩いているとしても、DODOCaseをつけていれば誰もそれがiPadとは気付きません。彼らにはあなたが本をもっているように見えるでしょう。彼らは気付きませんが、あなただけは知っている。そんな隠れたクールさもDODOCaseは演出しているのです。
6. もの作りの裏側を知る新プロジェクト「Maker Moment」
——最近ではZazzle(ザズル)とコラボレーションし、Maker Momentというビデオがリリースされ始めましたね。どのようなきっかけからこのコラボレーションは生まれたのでしょうか?
Craig氏:ご存知の通り、Zazzleはありとあらゆる商品のカスタマイズサービスを提供するマーケットプレイスです。一般的な目線では彼らのITシステムに注目がされがちですが、彼らはDODOCaseやRickshawのようなクラフトマンシップアイテムの製造の価値を信じ、また非常に大切にしています。
Zazzleはコモディティー化された商品に「カスタマイズ」という魔法をかけ、Tシャツ、名刺ケース、iPadケースなどありとあらゆるものを「あなただけの特別なアイテム」へ変えてくれます。
Maker Momomentは、Zazzleを通して、DODOCaseのもの作りの裏側、DODOCaseのアイテムをどのようにしてZazzleでカスタマイズできるのか、など「商品ができるまでの過程」にフォーカスしています。
私たちはまだまだ小規模のブランドですが、私たちのカスタマイズオプションであなたの個性を表現するサポートができれば、作り手としてこれ以上幸せなことはありません。
7. カスタマイズされるデザインのトレンドについて
——ZazzleとのパートナーシップでDODOCaseを自由にカスタマイズすることができますが、ユーザーがカスタムをするデザインのトレンドはどのようなものでしょうか?
Craig氏:毎シーズンごとにトレンドが変わるので、「これが今のトレンドです」と一概に言い切るのは難しいですが、顧客が選んでいるものは今のトレンドなんだろうという意識で日々、仕事に取り組んでいます。私たちの顧客はザズルを通してiPadケースのオーダーメイドを楽しんでいますが、それぞれのデザインやパターンは間違いなくトレンドの一部です。
私の望みとしては1人の顧客が複数のDODOCaseをもち、季節ごとに使い分けてくれることです。例えばですが、季節ごとにiPhoneケースを買い替えたくなるように、春はこの色、夏はこの色、秋はこの色、冬はこの色…..と、季節ごとに使い分けて頂ければ嬉しいですね。
8. iPhone6のリリースについて一言
——AppleからのiPhone6のリリース、率直にどのようなお気持ちでしょうか?
Craig氏:もちろん、非常に興奮しています。毎回のリリース前はそうですが、どのような商品が発表されるかどうかはヴェールに包まれていますので、新しいiPhoneがリリースされた後にはすぐ対応できるようスタッフ総出で準備をしています。
私たち含めた他社のアクセサリーメーカーも新iPhoneのサイズ、スペックにまつわる噂を元に確実性はないまま新しい商品開発を進めているのが現状でしょう。私たちも正確なサイズは把握していませんでしたが、iPhone6のリリースを見越したコンセプトは常に2~3個用意してきました。
新商品への対応は作り手側としては大変ですが、iPhoneを例に挙げればサイズが大きく違ったとしても、スペックが変わったとしても、「人々がどのようにその商品を使いたいのか?を知っていること」は他社にないDODOCaseの強みだと自負しています。
>>>後編へ続く